本日は愛知県瀬戸市陶原町にある「新海」さんにお邪魔しました。



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住宅街に佇む新海さん。
私の動線にないこのお店に訪れたのは理由があります。



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潔い純白の関西風暖簾を見に来たわけではない。



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暖簾をくぐり、短冊を眺め絶句する。
「松月」がない!
実はネット検索で玉子とじの後ろに松月があったので、はせ参じた訳なのであります。
仕方がないので中華そばでも頂こうかとも考えたのですが、すっとぼけて「松月ってなかったでしたっけ?」とお母さんに尋ねてみる。
お母さんもびっくりしたようで「松月!?月見のことだよ!あなた知ってるの!?今時注文する人もいないから値段変えた時に剥がしちゃった!知ってる人も頼まないしね。」なんて言われてしまいます。
「注文してよろしいですか?」と問うと、「ええ、いいですよ!」っとオーダーが入ります。
消費税はこんなところにも影を落としているんですなぁ~。



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打ちっぱなしの店内にはテーブルが2つ、カウンターにちょいと背の高い椅子が3脚、奥座敷。
座敷を陣取り、スポーツ新聞をめくるうちに。



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メニュー落ちしてしまった「松月」が提供されます。
美しいですな!
お母さんの「月見だよ!」って言葉に心配させられましたが、正真正銘の松月です。



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白出汁に浮かべられた松を表す板海苔はちょいと小さめ。月を表す卵はいい朧月夜ですな!
技のしてあるかまぼこにほうれん草。
これがデフレに強い愛知県、サービス過剰の愛知県の特有の「松月」ですよ!
一箸、二箸うどんを出汁で楽しみまして、ほうれん草やかまぼことうどんのハーモニーを楽しみまして、満を持して卵を崩し、混戦。
丼に口をつけ、最後の一滴まで飲み干す。
ああ旨い!!
お母さんに「とんがらし入れました?一番シンプルでいいね。」なんて声をかけられながら、ごちそうさまでした。


名古屋の特有の種物うどん「松月」も絶滅まで秒読み段階なんですな。

松月食歴
新海202011:四角海苔、かまぼこ、青菜、メニューに掲載なし
みやこ本店202010:四角海苔、青菜
みのや本店202010:刻み海苔、青菜、焼きかまぼこ、花麩
浅ひろ本店202010:三角海苔、青菜、かまぼこ、メニューに松月(月見)と記載
新角屋202007:三角海苔、青菜、メニューに掲載なし
山田屋202005:四角海苔、青菜
岩正202005:刻み海苔、青菜、かまぼこ
かどふく本店201806:四角海苔、青菜、かまぼこ、花麩、椎茸


未訪問店
メニュー掲載
めん処やなぎや本店(名古屋市北区清水):
いせ徳(愛知県清須市):板海苔(刻みねぎ別皿)
初味屋(名古屋市南区大磯通):板海苔
きくのや(名古屋市緑区曽根):刻み海苔、かまぼこ、花麩、椎茸

月見表記orメニュー非掲載
釜揚きしめん一八(名古屋市南区大江):板海苔、青菜、朱色蒲鉾
三浦屋(名古屋市東区出来町):板海苔、青菜、朱色蒲鉾

岐阜、三重にメニュー掲載で提供するお店あり。

松月メモ。
東海圏内のうどんの種物。
汁は白汁。全型の海苔の半分の上に卵を落としたもの。卵は白身が少し白くなる程度加熱、もしくは熱い出汁をかけ朧月夜って感じにするのが好ましい。
卵を月、板海苔を松に見立てたことが呼称の由来。かまぼこや青菜が入ることがあるが、東海では「かけ」が無いことを考えると呼称に影響を及ぼしたとは考えにくい。花巻の卵入りという訳ではないので、海苔は板海苔が正式だと考えられる。
昭和初期には東海の多数の麺類食堂で提供されていた。卵の価値と共に格下げが続き、今や絶滅危惧メニュー。令和2年の東海でも「月見」という呼称が一般的。



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「今度メニューに載せとこうか?」っと言ってくれるお母さんに、「私もなかなかお邪魔できないもんで。」とお答えすると。「なくても作るで!また来てちょうだい。」っと元気に送り出されました。
ご迷惑をおかけしました。
中華そばにおかめに志の田に木の葉と気になるメニュー満載なので、またお邪魔したいのは山々なんですが…、なんとか動線の工夫をしなければならないですね。

新海
0561823981
愛知県瀬戸市陶原町3丁目47
営業:11~14
定休:水